落ち着きを取り戻していたはずの心臓が、何倍もの速さで時を刻み始める。
・・もしも、マリウス様のお母様が嫁いだ相手が、
カナン国の王だったとしたら!
全身から、一気に血の気が引いていく。
椅子に座っているはずなのに、何もない空間に放り出されたような感じだ。
突然の、雨に降られた気がした。
砂漠の真ん中で。
恐ろしい自然の驚異によってできた川が、自分をさらっていく。
運命という名の、恐ろしい川。
・・違うわ。運命なんかじゃない。
父様は、最初から知ってたんだ。
母様とマリウス様が、いとこ同士だって!!
リリティスの父が国王だった話は、たくさん聞いて知っている。
大勢の民から、とても慕われていた王だったと。
その王が死んで、次に王位を継承したのは、一体誰か。
リリティスに兄弟はなく、カルレインが初めての結婚相手のはずだ。
とすると、可能性として高いのは、リリティスの父、当時のカナン国王の兄弟だろう。