「私、恥ずかしいわ。
この国に来る前に、色々調べてきたつもりだったのに、全然わかってなかったのね」
主要な産物、気候、習慣など、自分なりに学んだつもりだった。
けれど、そこに生きる人々の心について、行間からは何も得られない。
・・やっぱり、もっと街へ出て、色々な人々と交流したい。
城の中にいては、実際に生活する人々の苦労などわかるはずもない。
綺麗な色の布に囲まれて過ごしているのに、それがどこでどうやって作られているのかさえ、まるで知らない。
ソードとの結婚話にだけ気を取られ、大事な事を見落としていたような気がした。
ひょっとすると、そんな風に小さな視野で物事を考えていたから、
レリーの気持ちにさえ気づかなかったのではないかとも思う。
今からでも、興味を持っていただければ、嬉しいですけど、
と、掻き消えそうに小さな声を出すレリーは、すでにいつもの彼女だ。
「私、もっとこの国のことが知りたい。
ソードのことだけじゃなくて、レリーのことや、城の人や、街の人や、大勢の人のこと!」
ファラの言葉を聞いて、レリーは恥ずかしそうに口元を緩めた。