矛盾している、とレリーは、自嘲した。

ソードの妃になるかも知れぬファラに、言い知れぬ嫉妬を抱きながら、

それでもなお、彼女にソードを見捨てないでほしい。


からからに乾燥して、干からびてしまいそうなソードの心に、

自分では与えることのできない水の恵みを、期待しているのかもしれない。

ファラになら、それができそうだということに、うすうす感づいていても、

だからといって、ソードに自分の事を忘れてほしいわけでは決してない。


「私たちは、雨が降らないときには、雨を切望し、

雨が降れば、それによって失われた命に涙するのです」



・・まるで、私の心のようだわ。



母がカナンの出身とはいえ、自分の出身はこのホウト。

砂漠に生きる民なのだ。


ソードに幸せになってほしいと、心からそう望むのに、

いざそれが現実のものになりそうだと思うと、胸が苦しくなる。


レリーは、複雑な表情を浮かべて、切なそうに笑った。