「乾いた大地というのは、とても恐ろしいものなんです。

雨が降ると、低い土地は、たちまち川になってしまうからなんです」


「川?」


レリーの頭が大きく下に動く。


「雨水は、砂には吸収されないんです。

そのままあっという間に水位が上がって、その場の何もかもを砂と一緒に流していきます」


レリーが、嘘や脅しを言っているのでないことは、彼女の瞳を見れば明らかだ。

しかし、未知の世界は、頭の中で描きにくく、その説明をいくらきいてもぴんと来ない。


泳いで渡れないのかという、ファラの質問に、レリーは、とんでもない!と、

大きな声で反論した。


「流れの速さは、とても人間が太刀打ちできるものではありません。

大男でも、水に入ったら最後、死を覚悟します。

もしも木が生えていたとしても、それもなぎ倒されていきます。


砂漠で眠らなければならないときは、必ず山沿いに陣を張るんです。

自然は、いつ牙をむいて襲い掛かってくるかもしれませんから」


レリーは、それを見たことがあるように、熱弁を振るう。