ホウト国は、国の面積の多くを砂漠が占めている。

しかし、砂漠といっても、すべてが砂ばかりの土地というわけではなく、

この王宮が建っている場所のように、

植物が生い茂っている土地や、岩の多い地域、まとまった降水量がある地域などがある。


水が湧き出る場所には、小さな街が点在しており、

それらの間に、砂だけの土地が挟まれるようにして存在していた。


砂漠の南側にはモーリタ国があるが、はっきりとした国境がないのは、

そこが何もない砂漠だからだ。


そこは、テッサ砂漠--死の砂漠--と呼ばれていた。


「人々は、時々、砂漠を越えることがあります。

交易のためだったり、別の街へ行くために。


街で雨が降っても、たいした被害は出ません。

街があるということは、ある程度基盤のしっかりした土地だということですから、

せいぜい地面がぬかるんで、大変な程度です。


でも、

もしも、本当の砂漠で雨が降ったら、急いで高台に逃げなくてはなりません」


レリーの真剣な表情に、ファラは次第に引き込まれていく。

そこにいるのは、いつもはにかんだ表情を見せる、引っ込み思案の少女ではない。

砂漠の恐ろしさについて淡々と語る、案内人だ。