レリーの言葉の意味するところを、ファラはとっさに飲み込むことができなかった。
雨のせいで、死ぬ?
世界は広い。
自分たちとは、まるで違う言葉を操る人々がいるという話を、聞いたことがある。
しかし、レリーの口から発せられたのは、自分と同じ言葉で、
その一語一語は理解できるのに、それが全体となると、まったく意味不明だ。
知らない世界の人と会話をしているような、険しい顔つきになったファラを見て、
レリーは、噛み砕いてそれを説明し始めた。
「ファラ様は、砂漠をご覧になったことがありますか?」
「え、だって、ここは砂漠ではないの?」
てっきり、この王宮が砂漠の真ん中にあると思っていたファラは、驚いて目を瞬かせた。
確かに緑もあるが、カナンに比べれば、まるで間引きをしたようにしか生えていない。
風が吹けば、目に見えないような細かい砂が飛んできて、髪の毛に居座るのに。
諭すように、レリーの言葉が続く。
「ここは、水が湧き出ますし、緑もあります。
でも、もっと南、モーリタ国との国境の間にある本物の砂漠は、砂以外何もないんです」