「ひょっとしたら、ですが、雪が降るかもしれませんよ」


レリーは、ひょっとしたらを強調しながら、窓の外に目をやった。


「雪?!だって、ホウト国は、砂漠の国でしょう?

雪なんて降るの?」


私も見たことはありませんが、というレリーの瞳には、

一度くらい体験してみたいという期待の色が、見え隠れする。


「20年に一度くらい、降ることがあるそうです。

今日は星も見えませんし、雪が降らないまでも雨が降ると思いますよ」


ホウトに来てから、そういえばまだ一度も雨の日を過ごしたことがない。

そのことに思い当たって、ファラの声が弾んだ。


「恵みの雨だね。私、雨の日って好きなんだ。

雨が降ると、森の中の景色が全然違った世界に変わるの。

ホウトでは、水は貴重だから、みんな喜ぶんでしょう?」


当然、是、と即答されるかと思ったのに、レリーは複雑な表情を浮かべた。


「確かに、雨は大事です。降らなければ生きていけませんから」


でも、と言ってレリーは、俯く。


「この国では、雨のせいで人や動物が死ぬことも多いんです」