「お体がとても冷えてます。
もう少し、厚手の衣に着替えた方がよさそうですね」
てきぱきと働くレリーの手によって、ファラの体は暖かい毛でできた衣に覆われ、
強張っていた筋肉が、一気に弛緩する。
「ありがとう、レリー」
お互いが顔を見合わせると、どちらからともなく自然と笑みがこぼれた。
年相応の、少女らしい花開くような笑顔。
急に暖かい空気に満たされたのは、衣のせいだけではあるまい。
ファラは、軽くなった心に、ほっと息をついた。
持つべき荷の重さは相変わらずだ。
それでも、片腕で無理やり持ちあげようとしていたものを、鞄に入れて背中に背負ったような感じがした。
安定感が、まるで違う。
いつまでも尾を引くよりも、これからの事を考えるべきだと、ファラは心を切り替えた。
「それにしても、今日はやけに寒いのね」
息を吐けば、白い煙が現れそうな気配に、ファラは両手をこすり合わせる。