父から、ルビド王の真意を探ってくるよう命令を受けたものの、
自分より何枚も上の腹黒狸は、結局手の内を見せることはなかった。
まだまだ父にかなわぬ自分に、エリシオンは一人静かに嘆息した。
わかっているのは、何者かが、ファラの宿泊した宿に忍び入ったということだけ。
何者か、が、どうもソード王子つきの護衛ではないかということは、
ソランの報告からあがってきたが、やはり、証拠もなしに隣国の兵士を糾弾するわけにもいくまい。
だが、エリシオンは、ソランと同じようにその男--シドが、ファラを狙ったのだと確信を抱いていた。
御前試合で見せたあの殺気。
あれは、やはり間違いなく、自分に向けられたものだ。
ソランの勘と自分の勘を合わせれば、おのずと答えがはじき出される。
勘というのは、一見ただのあてずっぽうであるように思えるが、
実は、重ねた経験をもとに、脳が無意識に正解を導き出すものなのだ。
経験を重ねるごとに、勘が働くようになるのはそのためで、
それは、下手に思考をめぐらせるよりも、
はるかに高い的中率でもって、核心に迫ることができる。
シドという男の事を、早急に調べなければならないと、エリシオンは父に早馬を送っていた。