手許に運ばれた器を片手で持ち上げて揺らすと、液体の表面が波立つ。

昼間から酒を運ぼうとする侍女を制して、お茶にしてもらった。


お茶の色が七色に変化するのを楽しそうに見ながら、エリシオンは、くすくすと笑った。


「まぁ、さすがに5年後には、そんな遊びをしたいなんて、言わなくなったけどね」


ちらりとファラに視線を送ると、


「お兄様ったら、意地悪言わないで。

小さい頃の話です」


彼女は、桜色の頬を、ぷうと膨らませて答えた。


初めて会ったときから、素直に感情を表現するところは、少しも変わらない。

父が目に入れても痛くないほどかわいがっているのが、よくわかる。


思わず声を出して笑うと、大皿を手にした侍女が、

静かに歩いてきて、軽く頭を下げた。


「あ、レリー。どうもありがとう!すごくおいしそうな果物ね」


「はい。お昼には少し早いので、ファラ様のお好きそうなものを用意しました」


レリーが、机の上に皿を乗せると、早速ファラが手を伸ばした。