エリシオンは、優しい目をしてファラの頭を撫でる。
くれぐれも、ファラを寂しがらせないでくれ、と出かけに父に言われたが、
そんなことを言われなくても、このかわいい妹に、辛い顔などさせるわけがない。
「本当に母様は大丈夫なのね?」
「おや、君はいつから私の言う事を疑うようになったんだい?
昔は、私が魔法で君を男にしてあげると言ったら、あっさり信じたのに」
「わああああ!!それを言わないで!」
ファラは、真っ赤になって手で顔を覆った。
それは、まだ、ファラが幼い頃。
街の男の子たちが、橋の上から放尿してどこまでとばせるか競争をしていた。
それを見たファラは、自分もその仲間に入りたいと、駄々をこねて泣きじゃくった。
皆が自分は女の子だからだめだと言うのだと、わんわん泣いていたとき、
エリシオンは、言った。
『あと5年たてば、魔法でファラを男の子にしてあげるよ』
ファラは、長い間それを信じていた。
5年待てば、自分は男になれるんだ、と。