本当に、忘れてしまっているのだろうか、とファラが思った瞬間、

シドの瞳に、おもしろそうな色が浮かんだのが、見て取れた。


「わかってるのね!」


「あぁ。こんな風にしたことか?」


言うが早いか、シドは、ファラの唇に、自らのそれを重ねると、

さっきまで軽くのせただけの腕で、彼女の体を、力いっぱい引き寄せた。


片腕はファラの頭の後ろに回し、逃げられないように固定する。


「んっ!」


ファラは、思わず目を閉じた。

シドと重なっているのは、唇のはずなのに、その場所とは全く関係のない体の奥深いところから、

しびれたように甘い感覚が、せりあがってくる。



・・どうして、逃げられないの?



ファラは、その感覚に抗う術を知らず、ただただ、シドに身を委ねた。


その様子を、シドは、どこか楽しそうに眺める。