シドの視線を追うように、ファラも空を見上げる。

二人は軽く抱き合ったまま、なぜか穏やかな時が、流れた。

一瞬とも、永遠ともつかぬ、時間。



・・私、どうして逃げないのかしら。



危険な男と一緒にいるのだと、理性が訴えているのに、

それとは別の、心のどこかが、このままの状態を擁護している。


自分が自分でないような気がして、でも、その気持ちが何なのかわからず、

ファラは、シドの顔をまじまじと眺めた。


そこに答えはなかったが、代わりにシドがファラの視線に気づき、意地悪く笑う。


「なんだ、俺の顔に見とれて」


「なっ!見とれてなんか!」


「そう言えば、俺がした許せないことって、何だ?」


どうやら、さっき言った、

『あなたがしたことを、許したわけじゃないのよ』

という台詞の事を、指しているらしい。