「な、ななな何?」


突然抱きしめられて、ファラは、動くことが出来ない。

シドの腕は、さほど力が込められているわけではないので、

無理やり抜け出そうと思えば、そこから逃れられそうなのだが。


人肌と体温が、妙に心地よい。

心臓の音が、いつになく大きく響いている気がして、

ファラは、頬を赤くした。


「この方が、あったかいだろ?」


ファラが、自分の腕にすっぽりとおさまっているのを見て、

シドは、嬉しそうに微笑む。


その笑顔が、いつもとは違う“本物の”笑顔に見えて、ファラは、どきりとした。

わずかな沈黙が流れるだけで、耐えられそうもない。



・・お願いだから、何かしゃべってよ。

心臓の音が聞こえちゃう。