あなたがしたことを、許したわけじゃないのよ、とファラは言い訳をしながら、
両手を扉の取っ手からはずし、おなかの前で組み直した。
「大丈夫、なの?」
ファラの真摯な瞳に見つめられて、シドはとっさに目を逸らした。
目を合わせては、いけないような気がして。
いつものように、冗談めかして答えれば、すむことなのに。
二人の間を、風が吹き抜けると、冷えた空気がファラの体を取り巻いて、
ファラは、無意識に自分の体を抱きしめて、ブルッと震えた。
「寒いのか」
シドの低い声が耳に入ったかと思った次の瞬間には、
彼は、すでにファラの目の前に迫っている。
驚いて体を離そうとしたが、部屋の扉を背にしていることが裏目に出て、
ファラは、逃げ場がなくなってしまった。
殺されないまでも、何かされるのではないかと、身を硬くする。
が。
「ほら」
シドは、自分が腰に巻いていた上着をファラに羽織らせると、
そのまま、優しい手つきで彼女を抱き寄せた。