ファラが、自分と距離をとったのを見て、シドは、ふっと口元を緩めた。
「冗談ですよ」
・・今は、な。
シドは、自分自身の中で、確認するようにつぶやいた。
「そのわざとらしいしゃべり方、気持ち悪いから、やめてちょうだい」
ファラの強い口調に、シドは、手を口元にやって、くすりと笑う。
品のいい、小さな子猫のようななりをしているのに、
時々、野生の狼のような態度を見せる。
「あんたには」
「えっ?」
「あんたには、こんな堅苦しい檻の中よりも、
大自然を思う存分走り回るほうが、似合ってるな」
言いながら、シドは、露台の手すりに片腕を預けて、もたれかかった。