その夜、ファラは、部屋の露台から、夜空を眺めていた。
このホウト国に来て以来、皆が寝静まってから、外の風を感じることが、毎日の日課となっている。
唯一の解放の時間。
ファラの目の前には、漆黒のじゅうたんが一面に広がっていた。
初めて王の謁見の間で見た、不思議な色とりどりの布とは、まるで違う黒い闇。
でも、ファラは、それが嫌いではなかった。
その闇は、彼女の心を慰め、安らぎを与えてくれる。
大好きな・・、父の瞳と同じ色。
その闇の中に、星星が、大小さまざまな光を放ち、遠くから存在を主張している。
暗闇が父なら、星明りは、母や兄弟だろうか。
・・父様の胸に抱かれているみたい。
ホウト国の夜空は、どこまでもはてしなく奥行きが感じられて、自分を包み込む。
それは、父の深い懐に似ている気がして、ファラはそっと目を閉じた。