「泣くな、美愛」
気付いたらアタシは橘くんの腕の中にいた。
「………たち、ばな君…」
「瑛斗…、だろ?」
顔を上げると、ニヤリと笑っている橘くん。
「……瑛斗…」
そう呼ぶと、満足そうな顔をした瑛斗はアタシの髪をクシャクシャってしてリビングに戻っていった。
ソファに深く腰かけた瑛斗の後ろ姿を見てるだけで、何か嬉しくて……
でも恥ずかしくて……
「あんま見んなよ」
顔だけをこっちに向けた瑛斗はいつも通りの意地悪でムカつく口調だった。
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