「じゃあな」




「うん、バイバイ」



靴を履いて、ドアを開けながら橘くんは振り返った。




「無理すんな。寂しかったら電話しろよ。お前の下手な料理でも食べにきてやっから」



悪戯に、でもすっごく優しく笑った橘くんは左手を上げて外へ一歩、足を進めた。




「……待って」




橘くんは少し驚いた顔をして振り返ったけど、アタシの方がびっくりしてて。




「どした?」



って首を傾げて聞いてきた人は本当に橘くんか?って思うくらいカッコ良かった。




「……ぃで」




「ん?」



「……行か、ないで」