「兄ちゃんっそいつ掴まえてっっ」




「!?」



咄嗟のことに頭脳より先に身体が反応し気付くと目の前を走り去ろうとする男を掴まえていた。




「あーぁ、掴まっちゃった。お兄さんカッコいいね☆じゃっ、これは返しまーすバイバイッ」




「あっ…」


なんだいまの‥…?


俺の手の中には時計が一つ。






「あー…も…あいつ…」


息が荒い《五月時計屋》とプリントされたエプロンをつけたおばさんが駆け寄って来て俺の顔を見る。



「あらっ!時計。お兄さんありがとうねぇ、最近ここらで光り物が盗まれててね…、」


「はぁ…」

おばさん、俺はそんなことどうでもいい。


「でもお兄さんのおかげで助かったわ。お礼させてちょうだい」

「いや、そんな大したことしてませんし…失礼します。」

「なーに若い子が遠慮してるのっ学生さん?社会人?こんな時間なら夕飯まだでしょう。」

「まぁ…」

「ほらここの惣菜おいしいのよ。買ったげるから食べなさいね。ほんの気持ちだから。
奥さぁーん唐揚げ山盛りちょうだい」


結局、時計屋の通りの商店街の惣菜を持たされ俺は帰宅した。