自分からねだったくせに、やっぱり……こういうのって、ものすごーく照れてしまう。
恥ずかしくって、彼の顔が見られなくって、ふとぎこちなく目を伏せる。
さらにさらに俯いて、飾り気のない左手をじっと黙って見つめてみる。
「手、貸して」
「うん……」
「あっ、ひょっとして“入らなーい!”なんてオチはないよね?」
「なぬーっ!なんてことを!」
「いや、君が下ばっかり向いてるから、ちょっとした笑いでも提供しようかと思ってさ」
「もう、またそういうこと言う……っていうか、怒らせるようなこと言ってるし」
なーんて、拗ねた素振りをしてみても、自然に笑みがこぼれてくる。
私が笑えば彼も笑う。
彼が笑えば私も笑う。
彼も私も決して笑いを取るのが上手じゃないけど、二人の間は特別みたい。
言うなれば、私たちは互いにとって唯一確実に笑いが取れる貴重な存在なのだろう。
「“君の笑顔を守りたいから”なんてね」
「“なんてね”って何ですか……」
「おっ!指輪、ぴったりだね。まるで君の為にあつらえたみたいだ、うんうん」
まったく……。
この人は、なんて可愛い人なのだろう。
左手の薬指にひっそり輝く約束の指輪。
彼の下手な照れ隠しが、ますます私を嬉しくさせる。
指輪は本当に私の指にぴったりで、それはただの偶然なのかもだけど、だけど――
やっぱり私は何か運命的なものを感じて、じーんと胸が熱くなった。