おずおずと上目遣いで彼を見ると――
「じゃあ、ちょっと貸してごらん」
彼はにっこり微笑んで、差し出したリングケースをひょいと掴んで受け取ってくれた。
「あのね、私ね……」
「うん?」
「“じゃあすれば?”とか言われちゃったらね、どうしようかと思った」
「そんなこと言うわけないじゃない」
彼が“心外だなぁ”と苦笑しながらリングケースをパカッと開ける。
薄紫色の小さなケースは、彼の大きな手の中だと、さらに小さくコンパクトに見えた。
長い指でぎこちなく指輪をそーっと取り出す彼。
「なんか緊張するなぁ」
「落としたりしないでね」
「うん。細心の注意を払って、と……」
指輪を摘むその手つきはとてもとても慎重で、まるで――
「寛行さん、ピンセットでちーっちゃい破片でも拾い上げようとしてるみたい」
「うーむ、指輪を扱うのがこんなに繊細さを要求される作業とは……」
「繊細すぎです」
「そうかなぁ」
「絶対そう」
彼の可愛い生真面目さがすごく好き。
たとえちょーっとズレていても。
なんだかどこかトンチンカンでも。
そういうところも全部ぜんぶ、彼がまるごと大大大好き。