ほどなくしてドラッグストアの大きな看板が見えてきた。

典型的な郊外型大型店舗の駐車場は無駄に広く、夜ともなればもうガラガラ。

駐車している車は店の入り口に近い場所に数台のみ。

私は彼に頼んで駐車場の出入り口からも店からも遠い隅っこに車を止めてもらった。

わざわざこんな不便な場所に駐車して欲しいなんて、彼とて察しがついているだろう。

その意図が具体的にはわからなくても、目的が買物ではないことくらいは。

「えーと、あのですね……」

シートベルトを外して彼のほうへ向き直る。

「ちょっとお願いがあって……」

「お願い?」

「そうです。お願い、です……」

もじもじ用件を話しつつ、バッグにごそごそ手を入れて、それから――

「なんだろう?お願いって」

「えーと……」

「うん?」

はてなと首を傾げる彼に、大事な指輪の入ったリングケースを差し出した。

「指輪をですね、したいと思うのですよ」

えーと……高野詩織になることが決定している鈴木詩織、一世一代のおねだりである。