親に結婚の許しを乞いに行こうというのに、私ときたらまったく暢気にお気楽極楽。

寛行さんのご家族との対面を無事に済ませた今はもう緊張感ゼロ、脱力ふぅ~。

“本日の営業は終了致しました”みたいな。

もっとも、これから大仕事を控えている寛行さんには甚だ申し訳ない話だけれど……。

そりゃまあ、彼とてわかっているとは思う。

私の両親がこの結婚を反対したりはしないことも。

お父さんが、寛行さんに意地悪したり、ぶん殴ったりしないことも。

そうは言っても、だ……。

男性にとって一世一代の晴れ舞台、多かれ少なかれ緊張してるに違いない。

「あのね、寛行さん」

「うん?」

「ウチに行く前にちょっとだけ止まって欲しいのだけど」

「別にかまわないけど。コンビニとか?」

「うんん。ほら、前に送ってもらったときに私を降ろしてもらったドラッグストア」

そこへ立ち寄って欲しいと申し出たのは買い物があったからではなかった。

それは、彼にちょっとしたお願いがあったから。

あらためて両親に会う前に済ませておきたい仕事がもう一つだけあったから……。