帰り際、お母さんは美味しいと評判のお店のお豆腐を私に持たせてくれた。

「ご両親にお目にかかれるのを楽しみにしてるからね。どうかよろしくお伝えして」

「はい!ありがとうございます!」

そして、お父さんはあの穏やかな笑顔で優しい言葉をかけてくれた。

「しーちゃん、今度はまた冬休みにでもゆっくりいらっしゃい。皆、待ってるから」

「はい!冬休み、ぜったい来ます!」

しかーし、寛行さんには駄目押しでご両親のありがたーいお言葉が……。

「寛行は、わかってるでしょうけど、絶対に安全運転で行きなさいよ!いいわね!」

「くれぐれもあちらのご両親の前で失礼のないようにな。もう大人なんだから」

「はいはい、わかってます、わかってますとも。もう34だからね……」

寛行さんってば……。

それじゃあまるでお小言をいわれて不貞腐れる小学生みたいだし……。

いくつになっても親にとって子どもは子ども。

親を鬱陶しがるその態度が妙におかしくて可愛くて、私はひっそりくすりと笑った。


後部座席には、美味しいお豆腐と老舗の紅白饅頭。

ケータイのアドレス帳には、新たに新規登録されたアドレスたち。

バッグの中には、かけがえのない指輪。

心には、楽しさと嬉しさと安心感。

素敵なお土産を抱えてほくほくの私を乗せて、車は賑やかな高野家を後にした。