もう遠慮する理由なんて何もなかった。

むしろ――

「それじゃあ、お言葉に甘えて……私がいただいてしまってもいいですか?」

「もちろんよ。あっ、好きなようにリフォームしてかまわないんだからね」

「そんなことしないです!」

「あらあら、気にしなくていいのに。形を変えて生まれ変わるのもアリよ?」

「いいんです、ぜんぜんこのままで……うんん、このままがいいんです!」

譲り受けたこの指輪をずっとずっと大事にすること……それは私の使命なのだ、と。

お父さんがお母さんを想って選んだその形のままに。

大切な品物や想い出を受け継ぐこと。

私はさらにこの家の家族として皆と繋がることができた気がした。


それからしばらく、皆で家族団らんのひと時をすごした。

お父さんが婚約指輪を選びに行ったときの想い出話に感動したり。

むっちゃん夫婦の馴れ初め話に驚いたり。

周りをまきこんだお母さんの趣味の話に思わず苦笑したり。

などなど……楽しい高野家の話が盛りだくさん!

本当にいくら話しても飽き足らないほど、話題は尽きなかった。