ところが――

私の予想は大ハズレ。

お母さんが持ってきたのは古いアルバムなどではなかったのである。

「これね、実はもう何年もしまいっぱなしで、開けるのは本当に久しぶりなのよ」

色は落ち着いた薄紫色、大きさはちょうど手のひらにのっかるくらい。

表面はザラザラでもツルツルでもない独特の手触り。

その小さな入れ物は、紛れも無くリングケースに違いなかった。

「まあ昔の物だから。いかにも古いデザインで笑われちゃうかもしれないけど……」

お母さんは苦笑しながらケースを開けて中身を私に見せてくれた。

「じゃじゃーん!なんてね」

「あの、これって……」

「婚約指輪なのよ。あー、なんか急に色々思い出して恥ずかしくなってきたわ……」

お母さんの……うんん、お父さんとお母さんの思い出がつまった大事な指輪。

それは今っぽいデザインでこそないけれど、清楚で奥ゆかしい輝きを湛えていた。

「お母さん、九月生まれなんですね。あっ!じゃあ、乙女座ですか?」

「そう、乙女座。まあ、乙女座より獅子座のほうがお似合いって話もあるんだけど」

そんなことを言いながらちょっぴり照れ笑いするお母さん。

その愛らしい表情は皆をいっそう愉快で優しい笑顔にした。