お兄さん夫婦が気さくに接してくれたので、私は思いのほかリラックスできた。
しかも、お義姉さんから寛行さんの家族に関する情報をあれこれ教えてもらえたし。
「あら?もうお昼になるわね」
「えっ」
気がつくと、いつの間にやら時計の針はぼちぼち正午をさすところ。
「そろそろ帰ってくると思うんだけどね」
「そ、そうですか……」
ピリピリまではいかないけど、やっぱり心はどうしたってドキドキ、ソワソワ。
「大丈夫よ、そんなに構えなくても」
「大丈夫、でしょうか……」
「うん。ぜーんぜん大丈夫だって」
お義姉さんは私を労わるようにゆったりにっこり微笑んだ。
「お義母さんは、なんていうのかなぁ……そう!竹を割ったような性格の人だから」
「さっぱりした感じの方なんですか?」
「そうね。さっぱりしてて明るくて、みみっちいことは一切言わないの。で――」
「で……?」
「ちゃんと子離れできてる人なのよね。今は自分の趣味に生きてるぅ!って感じで」
お義姉さんの言葉に、高野家の長男次男が“うんうん”と頷きながら苦笑する。
「確かに子離れはできてるワな」
「まあねぇ。僕ら息子達よりも夫が大事って人だったからね、昔から」
「お義父さんとお義母さん仲良いもんね。って、噂をすれば――」
「え?」
庭先で砂利の上を車が通る音がする。
「さーて、お寿司、お寿司♪」
お義姉さんが、よっこらせっと立ち上がる。
程なくして、玄関からガララララッと勢いよく引き戸を開ける音がする。
私が心もとなく不安げに寛行さんのほうを見遣ると――
「シオリ殿」
「えっ?」
望クンがすっくと素早く立ち上がり、私の腕を引っ張りあげた。
「ささ、トモに参ろう」
「ええっ?」
そうして私はいざいざいざと望クンに手をひかれて玄関まで連れて行かれたのだった。