望クンはすぐまた再び玄関に戻ってきた。
ただし――
「ヒロユキー!」
「どーもはじめまして。兄の友和です」
「どーもー。妻の……ん?義姉の?えーと……あぁ!兄嫁の潤子です」
今度は、ご両親同伴で。
お兄さん夫婦の登場に、否応無しに俄かに高まる緊張感……。
「あ、あの……は、はじめまして!鈴木詩織と申します!」
かしこまって深々と……挨拶というより謝罪のようにお辞儀する。
「あらあらあら、どうぞ楽にしてね。今は私たち三人だけだから」
三人だけ、って……???
やや驚いて顔を上げて首を傾げる。
「あ、えと……」
「詩織さん、生物(なまもの)は平気?」
「へ?」
「あのね、今日のお昼はお寿司ですって」
きょとんとする私を見て、お義姉さんはいたずらっ子みたいに楽しそうにふふふと笑った。
やや戸惑って、助けを求めるように寛行さんを見上げると――
「きっと、お昼は盆と正月が一緒にきたみたいなご馳走だよ」
「えっ」
「大丈夫。明日は一家心中なんてことないから安心したらいいよ」
彼はやれやれとちょっと肩をすくめて、だけど愉快そうにくすりと笑った。