寛行さん、もっと早くに言ってくれたらよかったのに。
そしたら私だってちょっとは心の準備ができたのに。
「ごめん。僕、怒らせちゃったよね……」
「怒ってるっていうか――」
「……?」
「困ってるんだもん」
慎重で心配性の私は突然の状況に臨機応変に対応するのが苦手なのだ。
考えたってどうしようもないのに。
というか、考えようがないことなのに。
心は気ぜわしくざわめくばかり……。
「気休めなんかじゃなくて、本当に君は何も心配しなくていいんだよ?」
「けど……」
「大丈夫」
不安がる私を慰めるように、彼の左手が私の手をそっと優しく包み込む。
「まあ、動物園に遠足にでも行く気分で。気を楽にもってさ。ね?」
「動物園って……」
「きっと楽しいよ。だって……」
「?」
「僕と、一緒なんだから」
思わずはっとして、運転中の彼の横顔を確かめる。
本当は照れているくせに、なんでもない風を装っているその表情が愛おしい。
彼は心強い私の味方。
彼が一緒なのだから――
だから――
「私……」
「ん?」
「寛行さんの子どもの頃の恥ずかしい話とかいっぱい聞いちゃうんだ」
「えー、そりゃないよぉ」
きっと、何があっても絶対ぜったい大丈夫。