しかしながら、当然今さら後戻りできるはずもなく……。
あぁ、寛行さんは“取って喰いやしない”と言っていたけど、だけどやっぱり――
私、これから戦(いくさ)じゃなくて市場(いちば)に連れて行かれるんだ。
そんでもって、品定めされて、解体されて。
……。
ぬぉーっ!!
「詩織ちゃん???」
「ドナドナ……」
「はぃ?」
「荷馬車、ゴトゴト……」
「おや、今日は山羊さんじゃなくて牛さんなんだ?」
「……」
「いやぁ、運転には気をつけているつもりなんだけどね。車、乗り心地悪くてすまないねぇ」
のほほん暢気に羊男があははと笑う。
お気楽加減が癪にさわって、怒った山羊が恨めしそうに一つ鳴く。
「メェー……」
「あれ?やっぱり山羊なんだ?」
「むぅぅ、そりゃあ寛行さんは自分の家だからいいでしょうよ!あー、もう!」
私はむすっとして、駄々っ子みたいにイヤイヤイヤと首をぶんぶん横に振った。