お父さんは決して反対するつもりであれこれ言ってるわけじゃあない。

そんなことくらいちゃんとわかってる。

とにかくただ私のことが心配なのだ。

同居はしないとはいえ、私が寛行さんのご両親とうまくやっていけるのかどうか。

一人で辛い思いをしたりはしないか、淋しい思いをしたりはしないか。

私が心細い思いをしないよう、寛行さんはちゃんと味方でいてくれるのか、と。

「もし、君さえよければなんだけど……」

「え?」

「都合がつくようなら早いうちに、今月中にでも僕の家族に会ってみない?」

彼のご両親とのご対面。

それは私にとっては遅かれ早かれ通る試練。

私は気を引き締めて覚悟を決めた。

「できれば……私も早く寛行さんのご両親にご挨拶に伺いたいかも。

もちろん、お家の皆さんのご都合とか寛行さんのお仕事の都合が最優先だけど」

「じゃあ決まりだね。そうとなったら早速うちに連絡してみよう」

「え゛っ」

覚悟を決めたはずなのに、いざ事(こと)が動き始めたとたんにやや怯む。

「詩織ちゃんはホントに苦労性だなぁ」

「だって……」

「とりあえず、いきなり君を電話口に引っ張り出したりはしないから安心しなよ」

「うぅ……」

「それとも、ちょっと話してみる?」

いたずらっ子みたいに意地悪な冗談を言う彼に、私は全力で首を横に振って見せた。