けれども、もがくことも抗うこともせず僕はその日々を淡々とすごしていました。

一人には一人の強みもある、と。

自分本位に生きられる身軽さと、誰にも何にも気兼ねのいらぬ気楽さ。

一人というのは、ゼロではないにしろ失うものはやはり少ないものだから。

何らのしがらみもない自分にはいつでも捨て身になれる強みがある。

そんな理屈で自分自身を上手い具合に納得させていたのです。

けれども、それはやっぱり僕の強がりでした。

愚かな僕は君と出会って強く思い知らされたのです。

それまでの僕は悲しいかな色々なことに慣れすぎていました。

一人でいることにも、淋しいことにも、諦めることにも。

僕は大切なことを忘れかけていたのです。

それを気づかせてくれたのは君でした。

二人でいるということがどれほど素敵で尊いことかを。

望まれることの幸せを、心から守りたい人がいる幸せを教えてくれたのは君なのです。