彼の胸にすりすり頬をすり寄せてると、すごくすごく安心できていい気持ち。

「34歳の寛行さんも嗅き倒す」

「望むところだよ。存分にくんくんしてくれたまえ」

彼の優しい声色に、嬉しさと楽しさと心地よさが私の胸にいっぱいいっぱい溢れてく。

「あのね、寛行さん」

「うん?」

「私、これから……」

「?」

「……一生……くんくん独り占め!」

本当は――

「そうだよ。ずっと君だけの特権だから」

「うん」

言いかけたのは、もっと別のことだった。

“これから、一生懸命いい奥さんになれるように頑張るね”

だけど、その言葉は口に出さずにそーっと大事に心にしまった。


これから一緒に、時を重ねて、日々を重ねて、長い長い年月をともに重ねる私たち。

だから、変わろうとして変わるより――

焦らず、気負わず、のんびりと、

ゆるやかに、穏やかに、のびやかに、

私らしく、二人らしく、自然に変わっていけたらと心に願う私なのだった。