チーズケーキは思いのほか上出来で、甘さも固さもちょうどよくって美味しかった。

ちなみに、昨年の苦い教訓を踏まえて?今年はロウソクを立てなかった……。

「あっ、食べたのに僕まだ生きてるよ?」

「それは……こっそりカモシカが来てすり替えていったんですよ、たぶん、きっと」

いつだって私の言い訳はその場さえも凌げないすごく無理な苦し紛れ……。

「また何の為にそんなことを?親切心?」

「えーと……調査?そう!毒入りケーキの調査ですよ!サンプル採取?みたいな」

「ほほぅ」

「ふんっ、命拾いしましたね、寛行さん」

「カモシカの業務が僕にとっては思わぬ誕生日特典になったわけだ」

「えーと……」

「?」

私はよいしょと立ち上がり、バッグの中からリボンのついた小さな包みを取り出した。

「あのですね、これ……」

やや遠慮がちに包みをそっと彼に差し出す。

「誕生日特典です、私から」

「わぁ、嬉しいなぁ。ありがとう。今、あけてもいい?」

「どうぞデス」

不織布のベージュの袋に、こげ茶色のリボンを結んだシックなラッピング。

その中には黒い小箱が入っていて、さらにその中には……。