彼に私の家へ婿養子に入ってもらうだなんてこと、本当に考えてもみなかった。

確かに私は一人娘ではあるけれど、それこそウチとて由緒も家業もありはしない。

だけど――


今日も今日とて二人でお風呂。

ぼんやりと湯船に浸かりながら、ふと思う。

お父さんとお母さんの老後のことって、ひとえに私の肩にかかってるんだよね……?

それに、考えたくはないけど順番からすると二人とも私よりも先に……!!

考えるほど、頭の中はいっぱいいっぱい、もやもやもやん……。

そんな私をよそに、洗い場で黙々といつもの手順で几帳面に体を洗う寛行さん。

彼が“もやもやもやん”な諸々のことを、人知れず考えていてくれたなんて……。

結婚て二人のことなのに、私ってば彼にばかり心を砕かせ骨を折らせているみたい。

なんだか申し訳ないやら、情けないやら。

私にも何か……何かないだろうか?彼の為に、二人の為に何か……。

私は石鹸ですっかりアワアワの泡だらけになった彼に静かに控えめに話しかけた。


「あのー、寛行さん……」

「うん?」

「私にも出来ること、あるかな……?」

「んー、いや、あとはもう流すだけだし」


え、えーと……。

そういう意図で言ったわけではなかったけれど、この状況じゃ彼の答えは至極当然。


「……そっか」

「でも、ありがとう」

「うん……」


私はトンチンカンな自分にますます情けなくなりながら再び湯船に深く深く体を沈めた。