いつぞやみたいな見物客?は誰も無く、淋しい秋の海岸には彼と私の二人きり。
爽やかに晴れ渡る秋空が、抱きしめあう二人の誓いをそっと静かに見守っていた。
いつの間にやら風は止み、海は穏やかに凪いでいる。
限りなく高く続く澄んだ空。
果てしなく遠く広がる大海原。
どこまでも終わりの無いその光景に、私は彼と自分の幸福な未来を重ねて想った。
帰りの車の中、私たちは甘い余韻に浸る間もなく早速“お話し合い”を始めた。
「まずは君のご両親のところに正式にお願いに上がらないとね」
「うん。あっ!“娘はやらん”みたいなことはないからね!絶対、たぶん……」
「いきなりじゃないし。僕もあんまり心配してないよ、そのへんのことは。
ちゃんと筋を通して真剣にお願いすればわかって下さると思うよ、きっと」
「ん。私もね、寛行さんなら、お父さんもお母さんも安心して喜んでくれると思う」
ただ――嬉しいのと同じくらい淋しい思いをさせてしまうのかもしれないけど……。