みんなみんな彼が教えてくれたんだ。
抱きしめることも。
抱きしめられることも。
そして、抱きしめ合うことも。
もう他の誰に教わることもないであろう“男の人の抱きしめ方”。
私は、彼の抱きしめ方さえ知っていればそれでいい。
このぬくもりさえあれば、他には誰も知らなくたってかまわない。
いつだって、彼の口調はたいてい穏やかで優しいけれど、
やっぱり今日は特別で、なんだかちょっぴり熱っぽく、どこかほわんと甘やかで――
「ずっと、一緒にいよう」
「うん」
「一緒に幸せになろう」
「うん」
「もう今も幸せなんだけどね」
「うん」
「だから……」
「?」
「ずっと、幸せでいよう?一緒に」
「うん」
「ずっと、これからもずっとね」
「うん」
私はただもう彼の腕の中でうっとりと素直にその幸せをかみしめた。