ゆるく繋がれた私の右手と彼の左手。

空っぽの所在無げな左手に、彼の右手が伸べられて――

「じゃあ、今度は本番だよ」

私たちは、手を取り合って向かい合った。

まるでぎこちないフォークダンスのペアのように……。

おずおずと上目遣いで彼の表情(かお)を盗み見て、またすぐさっと目を伏せる。

「顔、見せてくれないの?」

「だって……」

これから始まるドラマを知ってるのに――

うんん、知ってるからこそ――

胸がどきどき高鳴って、心がきゅんきゅんときめいて、いっぱいいっぱい苦しくて。

だけど――

「鈴木詩織さん」

「はい……」

今度こそホントのホントに本番なんだ。

私は、今からもう感極まって高ぶる気持ちを抑えつつ、ゆっくり静かに彼を見上げた。