仕事が終わるとすぐ、バスに乗って寄り道もせず帰宅した。
いつもなら帰り道もお昼ごはんも彼と一緒だけど、今日はひとり。
お昼をあり合わせのものでササッと済ませて一息つく。
なんとなくつけていたテレビを消して、しんと淋しく静まり返った一人きりの部屋。
ちょっと手持無沙汰、みたいな……。
結婚式の前日といっても、実のところ特にやることなどはなかった。
必要なモノやコトはすべて、提携業者に手配済みでおまかせだし。
本当に、当日時間通りに“身ひとつ”で行けばよいという感じだった。
なにしろ私は自他ともに認める段取り魔。
前日には極力何もすることがないようにと準備をすすめてきたわけである。
もちろん、両親への手紙だって……。
昨日夜遅くまで起きていたのも、今朝早く起きられなかったのも、両親へ渡す手紙を書いていたからだった。
さすがに、式の前夜によなべして目の下にクマを作っていくなんて嫌だもの。
だから、余裕を持って前々日に。
もっとも、手紙を書いたからといって、皆の前で読むことはないのだけど。
私たちは知人や友人を招いて披露宴を行うわけではないし。
式の後に両家の家族だけで食事会をすることになってはいるけど、その最中にわざわざ“お手紙披露~”などというコーナーを設けるわけでもないし。
っていうか、そんなコーナーずぇったいに断固拒否だしっっ
それでも――。
やっぱり、手紙という何か残るかたちで両親に気持ちを伝えたい、伝えなきゃという気持ちがあったから。
お母さんが、モモちゃんとお裁縫箱と一緒に心をこめて手紙をおくってくれたように。