いよいよ結婚式を明日に控えた土曜日の朝。
目を覚ますと、隣は既に抜け殻状態で……。
しかも、目覚まし時計はセットした時刻をとっくに過ぎていた。
うぅ、ちょっと早起きしてフレンチトースト作ろうと思ってたのに……。
っていうか――
私ってば自分は寝くさってからに、いつもより無駄に早く寛行さんを起しちゃってるし!
ほんっと、私ってしょーもない……。
台所からはコーヒーのいい匂いが漂っていて、寛行さんはいつものように床に新聞を広げて読んでいた。
「おはようございますデス」
「あ、おはよう」
顔を上げてにっこり微笑む寛行さん。
あぁ、はた迷惑な起こされ方をしたでしょうに……優しいなぁ。
彼のすごいところってたくさんあるのだけど、そのひとつが“朝から機嫌がいい”ってとこだと思う。
朝に弱い私は何もなくても勝手に不機嫌だったりするのに。
私は新聞を挟んで真正面に彼に向って正座した。
「えーとですね、愚かな何者かが早めにセットした目覚ましのせいで……寛行さんを変な時間に起こしてしまって申し訳ないことデス」
もさーっとした髪のまま深々と頭をさげてお詫びする。
「“何者か”は自分で目覚まし止めていたけど、覚えてないよね?」
「さっぱりです……」
「だろうね」
恐縮至極で小さくなる私の頭をくしゃりと撫でながら、寛行さんはくすりと笑った。
「いいじゃない。“二人して仕事に遅れるほど寝坊しました”なんて話じゃないんだしさ」
「かたじけないデス……」
あぁ、寛大な旦那様で私は幸せ者です……。
「じゃあ、ご飯にしようよ」
「うん」
もちろん、支度は私がさせていただきます!と。
せめてもの罪滅ぼしに、私ははりきって立ち上がろうとした。
「じゃあすぐに支度するね!」
「あ、いいよ。もう焼くだけだから」
「へ?」
なんですと?
「“何者か”がプリントアウトしたレシピが置いてあったからさ」
そ、それは……。
「もう焼くだけだから。フレンチトースト」
あうーっ!
うぅ、私ってばもう……。