寛行さんにダンボールを持たせて(本当はわざわざ持ってもらうほど重くはないのだけど……)階段を下りていくと、

「あら?もういいの?」

キッチンから、お母さんがぬっと顔を出してきた。

「うん。荷物はもう大丈夫だよ」

「そうじゃなくって!ムフフ……」

「お母さん……」

ムフフって……。

「まだ二階でゆーっくりしててもいいのよ~」

まったく、母親らしからぬ変な気の遣い方するんだから……。

「いいから、早くご飯にしようよ」

「あら~、そーお?」

「そーお!」

お母さんがキッチンに引っ込んだのを確認して後ろにいる彼を振り返ると、

「そうかぁ、もう少しゆっくりしてくればよかったかなぁ」

「寛行さんまで……」

冗談まじりに笑っていた。