とんだ無精で親不幸者の私を、寛行さんが優しく諭す。


「とにかくさ、ちゃんと都合をつけて実家に戻ってご両親に顔見せてあげなよ」

「まあ、そうだよねぇ」

「そうだよ、うん。それがいい、絶対に」


とてーも熱心に里帰りをすすめる寛行さん。

それにしても――

なぜにそこまで???

写真以外のことで他に何か理由でも???


「あのさ、僕は男だからよくわからないのだけど――」


私の心を察したのか、帰省をすすめる理由について寛行さんが歯切れ悪く話し始めた。


「その、何というかほら……」

「何?」


はてな?ときょとんとする私。


「だから……父親と嫁ぎ行く娘には特別なものがあるんでしょ?」

「特別なもの……」


なるほど、そういうことかぁ。


寛行さんの気遣いというか、ひょっとしたら期待?というか。


“お父さん、長い間お世話になりました”


きっと私がお父さんにこの台詞を言うに違いない、と?

いやいやいやいや……っていうか――

寛行さん的には当然言うべきであるってな感じなんだろうなぁ。

なんつかもう、寛行さんってば……。

まあまあまあ、さあさあさあ、どうぞどうそ!みたいな?


あ゛ー、なんだかなぁ。

う゛ー、どうしたもんかなぁ。


「きっとさ、口には出さなくても待っていると思うよ?だからさ、帰ってきなよ」

「そ、そうかなぁ?写真はさくっと送ればいいわけだし……いいんじゃない?」

「そんな淋しいこと言わないでさ」

「だって……」

「お父さんとお母さんが泣いてるよ」

「私は取り調べ中の容疑者ですか!」

「カツ丼出そうか?」


むぅぅ、この人は……。