穏やかに晴れた日曜日。
私はお父さんとお母さんと3人で実家の近所のマクドナルドで朝マックしていた。
「務さんはどうしてそうなの?フィレオフィッシュは昼でも夜でもあるじゃない?」
「マフィンはどうも苦手なんだよ」
「もぅ!朝しかないのにすればいいのに。なんかもったいなーい」
「いいじゃないか、別に」
「しーちゃんも!ホットケーキなんていつでもどこでも食べられるでしょ?」
「だって、食べたいんだもん」
「まったくもう、あなたたちはぁ」
ちょっとつまらなそうな顔をしてエッグマフィンにかぶりつくお母さん。
そんなお母さんに、やれやれと顔を見合わせて小さく笑うお父さんと私。
「結婚式の前に一度実家へ帰ってはどうだろう?」
そう提案したのは寛行さんだった。
その日はちょうど木曜日で。
彼は講義がなくて実質休日、私の勤務先も休診日でお休み。
木曜は土曜日に仕事のある私たちの大事な休日。
そんな平日休みを利用して、和装の結婚写真の前撮りに出かけた帰り道。
久しぶりに乗った地下鉄はガラガラ。
同じ車両の乗客は、遠く離れた席に年輩の女性が二人いるだけだった。
「写真で思い出したのだけど。君、大事な写真をご両親に見せてないでしょ?」
「えーと」
「お母さん、君の袴姿の写真を楽しみにしていたんじゃないの?」
うぅ、そのとおりでございます。
大事な写真というのはY大学大学院の学位授与式の写真のことで。
F女学院の卒業式で袴を着なかった私には最初で最後の袴姿の写真。
お母さんはそれを見るのをけっこう楽しみにしていたのだ。
なのに――
出来上がった写真を送ろう送ろうと思いつつ、つい……。
“まあ、腐るもんでもないし”などと……。
忙しさにかまけて、大事に保管したまま熟成させていたのである。