入籍という人生の一大イベント?を終えたあとは、いつもどおりの平常営業。
彼はお仕事、私はバイト。
彼の出勤に便乗していつものようにバイト先へ送ってもらう。
さっきまでいた区役所と私の職場は、区は違うものの実はわりとご近所さん。
車はすぐに私がよく知っている道に出た。
助手席の窓から見えるのは、いつもの見慣れた街の風景。
なのに――
なんだか今日は、ちょっぴり眩しく輝いて見える。
「あのね、この辺りで降ろしてもらってもよい?車が止めやすいところでいいので」
「それはかまわないけど……少し歩く感じになってしまうよ?」
「うん、まだ時間あるし。ちょっとお散歩しながら行くから」
「そっか。じゃあ了解」
彼はすぐ近くの乗り降りしやすそうな適当な場所で車を止めてくれた。
「はい、到着」
「ありがとう。んじゃ、いってきます」
「いってらっしゃい。気を付けて」
「はーい」
そして、シートベルトを手早く外して、ドアを開けようとしたしたそのとき――
「詩織ちゃん」
「へ?」
彼がまたとんでもないことを言い放った。
「今夜は新婚初夜だね」
「なっ……何をっ……!」
ぬぉっ!!こ、この人はぁ……!!
いたいけな奥さんのことを、おもしろがってからにぃぃ!
「ハイ、それでは夜を楽しみにしてお仕事頑張りましょう」
「むぅぅ!もう!頑張りますよ!頑張ってくればいいんでしょ!」
不貞腐れた口調でそう言い残し、私は逃げ去るように車を降りた。
彼の言葉に……不覚にもドキッとしてしまったことは絶対に内緒だ。
それから……ちょっとした期待に今も実はドキドキしていることも。