私ったら、なんという“うっかりさん”!

もうもうもう!すっかり忘れてたよ!

なんと――


「婚約指輪、朝からいつーもどおーりつけてて……で……そのまま外すの忘れてた」


結婚指輪をはめてもらう左手の薬指には先客?がいたのである……。


彼のお母さんから譲り受けた大切な指輪。

せっかくだもの、入籍するまでは出来るだけつけておきたいと思いそうしていたのだ。

だから今朝も……。

もう随分と指に馴染んでいて、あまりにも違和感ないから気がつかなくって……。

胸きゅんドキドキのせいもあって、ちーっとも気がまわらなくって……。

あぅぅ……決まり悪いやら、彼に申し訳ないやら。


だけど――


「ありがとう」

「えっ」


彼はとても嬉しそうに微笑んでくれた。


「君が気に入ってくれて、そうしていつも身につけていてくれたなんてさ。

さぞや嬉しかろうと思うよ、その指輪も、僕の母親もね」


寛行さん……。


「指輪の交換……交代、しようね」

「お願い、しますデス」


婚約指輪は彼に外され、とりあえず結婚指輪の入っていた場所へしまわれた。


そして――


「“いつも一緒に”ね」

「はい……寛行さんも、ね?」

「もちろんだよ」


私たちは誓いの指輪を交換し、二人のこれからを信じあった。