3月16日。

いよいよ、婚姻届提出の日である。

私たちは朝から支度をして、窓口が開く時間に合わせて車で区役所へと向かっていた。

昨夜は降っていた強い雨はすっかり止み、今朝は清々しく晴れている。


「晴れてよかったねー」

「“雨降って地固まると申します”」

「もう、またそういうこと言って……」

「おじさんの定番だからね」

「むぅぅ、おじさんなんだ」

「おじさんですよ。無駄に悪あがきしたりしないで認めるあたりが潔いでしょ?」

「えー、どうかなぁ」


彼の鞄の中には、予め用意してきた婚姻届の用紙と結婚指輪が入っている。

昨日の夜、二人で慎重に慎重に、丁寧に記入をした婚姻届。

証人欄には二人の父親たちの署名がある。

結婚指輪は今日この日まで大事にしまって熟成?させておいたのだ。

最初に指輪をするのは二人一緒に、指輪に刻印したその日に、って。


もうすぐ……その時がやってくる。


駐車場に到着して車を降りて――


「それでは、行きますか」

「うん。行きますか」


私たちはどちらからともなく手をつないで、目的へむかって歩み始めた。