寛行さんとお父さんに見守られて荼毘に付されたモコ。

お骨は大事に持ち帰られた。

そして――

この高野家のお庭でモコは静かに眠っている。


「目印になる木を決めて、その側に穴を掘って埋めることにしたんだ」

「その木って、今も……???」

「見てみるかい?」

「はい!」


一応?寛行さんの様子を確認したら、お利口さんにお昼寝中だし。

そのままそーっと寝かせておいて、と。


「わたしは、ちょっとそこまで買い物に出る用事があるんでね。

とりあえず一緒に玄関から出て庭へまわるとしようか。

あ、一応ちょっと一声かけてから行くので先に玄関で待っていてくれないかな?」

「わかりました」


そうして私は先に玄関で靴を履いてお父さんを待って、二人で一緒に庭へ出た。



「ほら、この木だよ。残念ながら今時分だとあまりおもしろみがないんだがね」

「この木って……」


それは立派な金木犀の木だった。


「あのときは秋で……ちょうど金木犀の季節だったんだなぁ」

「そう、だったんですか」


少しの間――

お父さんと私はなんとなく黙ったまま、二人で静かにその木を眺めた。


「さて、わたしはもう行くが……しーちゃんはまだしばらく見ていくかい?」

「はい、もう少し」

「なら、せっかくだから他にも色々と見てみるといい。たいした庭ではないがね」


お父さんはにこやかに笑い、そう言い残して出掛けて行った。