その夜――
おうちに帰った私たちは、ちょっと久しぶりに仲良く一緒にお風呂に入った。
それから、渡しそびれていたバレンタインのチョコを二人で開けて食べた。
食べながら、お茶を飲みながら、いろんないろんな話をした。
「寛行さんは、結婚式のこと私に任せ過ぎてたら大変なことになっちゃうんだから」
「大変なこととは?」
「例えば……お衣装とか?」
「衣装って?君の?」
「うんん、寛行さんの。何着せられるかわかったもんじゃないですよお?」
「いやいや、任せた以上は君が選んだものを黙って着る所存でありますよ、僕は」
「じゃ、全身タイツね。色はもちろん白」
「この子は……」
「タイツが嫌ならクマさんの着ぐるみね」
「色はもちろん白?白クマ?」
「当然。あ、でも……どうしてもって言うならツキノワグマとかでもいいですよ?」
「うーむ……」
「あらら?新郎様は、そんなに悩むほどどっちのクマも捨てがたいのかしら?」
「意地悪だなぁ、新婦様は」
“やれやれ、降参しましたよ”と、困ったように彼が笑う。
私はわざと偉ぶって至上命令を彼に下す。
「私の好きなようにしていいってことは、何でも言うこと聞いてくれるんだよね?」
「それは……」
「あれれ?違うのお?」
「いや、そのとおりです……」
「だったら――寛行さんは結婚式のことにもっとちゃんと関心をもつこと!」
「はい……」
あぁ、しおらしく小さくなる彼のなんと可愛いことでしょう!
だからというか――
つい、仏心が出てしまう……。
「あの……“もっと”が無理なら“もうちょっと”でもいいから関心もって?ね?」
「優しいね、新婦様は」
「なっ……!もう!わかったんですか!」
「はいはい」
「本当にぃ?アヤシイもんだ」
「御意。すべて新婦様の仰せのままに」