もうちっとも気まずくなかったし、怒りたい気持ちも失せていた。
「あーあ、もう。脱力って感じだよ、私」
「やっと……」
「ん?」
「笑ってくれたね」
「えっ……あ゛ぁーっ!!」
むむむ、不覚……!まんまと彼の術中にはめられてからにぃぃ!なーんて。
本当は、久しぶりに二人で笑い合えたことが嬉しくて心地よかった。
「むぅぅ、こういう笑いの取り方はちょっとズルイと思う」
「いいんだよ。笑いなんてね――」
「“取ったもん勝ち”でしょ?」
「そっ。もう……怒っていない?」
「うーん、それはまあ……」
怒っているもいないも、ねぇ……。
なんだかもう、意地になっているのが、ほんっとアホみたいで、バカバカしくて。
寛行さんのスバ抜けた鈍感力に完敗というか乾杯♪というか。
だけど――
「怒ってはいないけど。でもね、やっぱりちゃんと理解って欲しいとは思ってるよ」
私が抱えていたちょっとした不安とか不満とか、言い知れぬ淋しさとか知ってほしい。
「だから、もっとちゃんと話したいし、寛行さんに聞いて欲しいなって思ってる」
「うん」
「いろんなこと、いっぱい……ちゃんと」